相続不動産の調査方法とは?漏れなく調べる手順と注意点を徹底解説
被相続人(亡くなった方)が生前に不動産を所有していた場合、「どのような不動産がどこにあるのか」を正確かつ漏れなく把握することが相続手続きの重要な第一歩です。
もし不動産の把握に漏れがあると、以下のような重大なトラブルに発展するリスクがあります。
- 相続税の申告漏れによる追徴課税の発生
- 後から不動産が見つかることによる遺産分割協議のやり直し(協議の難航)
- 相続登記義務化に伴い、相続登記未了による過料対象に
被相続人名義の不動産を余すことなく慎重に調査するための「従来の調査方法」から、2026年4月にスタートした「最新の制度」まで詳しく解説します。
1. 固定資産税納税通知書(課税明細書)を確認する
最も手軽に相続不動産を把握する方法が、毎年4月以降に不動産が所在する市区町村から送付される「固定資産税納税通知書(課税明細書)」の確認です。
わかること
不動産の地番・地目・地積・家屋番号などの明細
注意点(見落としリスク)
免税点以下(課税標準額が土地30万円未満、建物20万円未満)の不動産や、非課税不動産(私道・共有地・墓地・保安林・崖地など)は記載されないケースがあります。
➡ この方法はおおまかに相続不動産を把握・特定する手段であり、「2.」以降の他の方法とあわせて調査されることをおすすめします。
2. 名寄帳(なよせちょう)を取得する
「名寄帳」とは、市区町村の固定資産課税台帳に基づき、所有者ごとの不動産の登録事項を一覧にまとめた帳簿です。
不動産の所在地によって請求先が異なり、別荘など複数の自治体に不動産を持っている場合は、それぞれの自治体に請求する必要があります。(例:板橋区の物件は板橋都税事務所、和光市の物件は和光市役所へ請求)
名寄帳の落とし穴・請求時の確認ポイント
名寄帳を取得しても、各自治体によって名寄帳に記載されるための条件が異なり、すべての不動産が網羅されるとは限りません。
請求時には窓口で以下の点等を確認すると安心です。
共有不動産の記載漏れはないか
自治体(東京23区など)によっては、被相続人が「共有の筆頭者」でない場合、名寄帳に記載されないことがあります。
旧住所での登録漏れはないか
被相続人の住所や氏名が旧住所・旧姓で登録されたままになっている場合、現在の住所で検索をかけても漏れてしまうことがあります。
3.「住所」しか分からない場合は、法務局で「地番」を照会する
被相続人の自宅や、親族から「あのあたりに土地を持っている」と聞いた物件など、「大体の住所」だけが分かっていて手元に納税通知書などの資料がない場合もあります。不動産の登記簿(登記事項証明書)を取得するには、私たちが普段使っている「住所(住居表示)」ではなく、法務局が定めた「地番(ちばん)」が必要です。手元に資料がなく住所しか分からない場合は、以下の方法で地番を割り出します。
- 管轄の法務局に電話をして地番照会を行う
- 法務局に備え付けられている「ブルーマップ(住居表示と地番が併記された地図)」で確認する
- インターネットの「登記情報提供サービス」の地番検索機能を利用する
地番が判明すれば、そのまま法務局で該当物件の登記事項証明書を取得し、所有者や権利関係を正確に把握することができます。
【実務の落とし穴】「私道」や「共有持分」は登記漏れが多い!
私たち専門家が実務を行っていると、自宅の敷地や建物の相続登記は終わっているのに、目の前の「私道」や「ゴミ置き場等の共有持分」だけ相続登記が漏れたままで放置されているであろう事案が多く散見されます。
これら私道などの「非課税不動産」は、そもそも固定資産税がかからないため、上記の固定資産納税通知書(課税明細書)に記載されないケースが多く、ご遺族が気づきにくいためです。
このまま放置されたままだと、将来その不動産を売却しようとした際に、この私道などの登記漏れが原因で手続きがストップしてしまう可能性もございます。
こうした「隠れた非課税不動産」を見つけ出すために欠かせないのが、次から解説する法務局での調査です。
4.登記事項証明書と公図で権利関係・周辺を調べる
納税通知書や名寄帳、地番照会などによって不動産(地番)が特定できたら、法務局で「登記事項証明書」を取得し、現在の正確な所有者や権利関係を確認します。
過去の「分筆」を確認する
表題部(登記記録の最初の部分)を確認し、被相続人が不動産を取得した日以降に土地が「分筆」されていないかチェックします。分筆されている場合は、必要に応じて分筆先の地番の登記事項証明書も取得します。
「共同担保目録(全部・抹消含む)」を活用する
不動産の登記事項証明書を取得する際は、必ず共同担保目録付きで請求しましょう。
自宅の底地や建物だけでなく、「私道などの共有持分」や「遠方の別荘」などが共同担保に入っている場合、この目録に記載されます。
さらに、現在効力のあるものだけでなく「全部(抹消を含む)」の形式で請求することで、すでに担保権を抹消済みの過去の不動産履歴も確認でき、未知の所有不動産を発見する手がかりになります。
「公図」から周辺土地を調査する
登記事項証明書とあわせて法務局で「公図(地図)」を取得します。公図から周辺土地の地番を把握し、その登記事項証明書を取得することで、名寄帳に載っていなかった私道などの権利関係を捕捉できることがあります。
取壊し済の建物の登記簿が残存していないか調査する
建物を取り壊した場合、所有者が滅失登記を申請することによって初めて取り壊した建物の登記簿が閉鎖されますが、被相続人が滅失登記の申請を放置してしまった結果、取壊し済みの建物の登記簿が残存しているケースも多いです。
そのため、相続した土地上にすでに存在しない建物の登記簿が残存してしまっていないかも併せて調査しましょう。
法務局に確認をしてもらい土地上の全ての建物の登記簿を請求するか、インターネットの登記情報提供サービスの「土地からの建物検索指定」機能を利用して調査をすることが可能です。
5.【2026年4月施行】「所有不動産記録証明制度」を活用する
これまで解説したように、相続不動産の調査は「自治体ごとの確認」や「法務局でのアナログな調査」が必要で、非常に手間のかかるものでした。
この負担を劇的に軽減するため、2026年(令和8年)4月に「所有不動産記録証明制度」が新たにスタートしました。相続人にとって非常にメリットの大きい画期的な制度です。
制度の概要と名寄帳との決定的な違い
この制度は、法務局のシステム上にある登記記録を検索し、特定の人が所有名義人となっている全国の不動産を一覧化した証明書(所有不動産記録証明書)を発行してもらえる仕組みです。
被相続人が、家族に内緒で遠方にリゾートマンションを買っていたり、遠方の山林を相続したまま放置していたりした場合でも、この制度を使えば一括で発見できるようになりました。
| 比較ポイント | 名寄帳 | 所有不動産記録証明制度 |
| 検索範囲 |
市区町村ごと(他の市町村の物件は不明) |
全国一括(どこの不動産でも抽出可能) |
| 請求先 | 不動産がある各市区町村役場 | 管轄を問わず、全国の法務局 |
| 情報の元 | 課税データ(固定資産税台帳) | 登記データ(法務局の登記記録) |
利用する際の注意点(万能ではない理由)
非常に便利な制度ですが、以下の点には注意が必要です。
未登記の不動産は出てこない
あくまで「法務局に登記されているデータ」を検索するため、そもそも登記されていない建物などは一覧に載りません。
旧住所・旧氏名での登記漏れリスク
被相続人が引っ越しや結婚をした後、不動産の「住所・氏名変更登記」を行っていなかった場合、最終の情報のみで検索をした場合は漏れてしまう。
そのため、新制度が施行された現在であっても、「所有不動産記録証明制度」のみでなく従来の調査方法を併用してチェックすることが、最も確実な調査方法となります。
6.「権利証」など手元の資料から発覚するケースも多い
公的書類やデータ上の調査だけでなく、被相続人の自宅(金庫や仏壇の引き出しなど)にある資料をくまなく確認することも極めて重要です。
実は実務上、最新の「所有不動産記録証明制度」や「名寄帳」から漏れていた不動産が、遺品整理で見つかった『権利証』など以下の資料から発覚するケースも多いのです。
- 権利証(登記済証・登記識別情報通知)
- 過去の売買契約書
- 過去の相続登記関係書類・相続税申告書類等
なぜ公的なデータから漏れてしまうのでしょうか。それは、被相続人自身が先代から相続したまま相続登記が未了(名義変更していない)であったり、引越しによる住所変更登記等が行われていないなどの理由によるものです。公的機関のデータ上は「別人」や「旧住所」のままになっているため検索に引っかからず、自宅に残された物理的な『権利証』などの資料が唯一の決定的な手がかりとなることもあります。
必要に応じて、被相続人のご親族に先代から相続した不動産についても相続登記が未了となってしまっているものがないかなどのヒアリングを行い、実態調査を行うと良いでしょう。