相続登記義務化の背景
国の調査によると、相続登記がされないことなどが原因により約20%の割合の土地が「所有者不明土地」であることが判明しております。
相続登記未了問題は、空き家の増加、数次相続の発生などによる権利関係の複雑化、災害復興の遅れの原因になるなど多くの社会問題を引き起こしています。
現在の所有者不明土地がこのまま放置された場合、2040年の所有者不明土地は、約720万ha(北海道本島の面積に迫る水準)に増加すると予測されています。
相続登記義務化
この社会問題の対策として、2021年4月21日に民法・不動産登記法の改正等に関する要綱案が成立しました。
現在、相続登記を始め不動産登記における権利の登記は義務ではありませんが、この法改正により相続登記が義務化されることとなりました。この改正法は2024年までを目途に施行される予定です。
この改正法が施行されると、相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に不動産の名義変更登記をしなければならず、これに違反すると10万円以下の過料の対象となってしまいます。また、法改正後に発生した相続のみならず、法改正以前から相続登記をしていない不動産についても適用されることとなります。
「相続人申告登記」の新設
また、上記改正により「相続人申告登記」という制度も新設されることとなります。
これは、相続人が、不動産を所有されていた方の相続人であると法務局に申し出ることにより、登記官が職権で「申出をした相続人の氏名・住所など」を登記するものです。
相続人間で遺産分割協議がまとまらないなど、上記期限内に登記を行えないような場合に利用されることとになるかと思います。
この申出を行うことにより、相続登記の義務を履行したとみなされるものの、これは相続登記ではなく、「不動産の所有者につき、相続が開始したこと」「自らが相続人であること」を公示するだけの報告的な登記という位置づけのため、その後遺産分割が行われた場合、相続登記を申請する義務が再度発生し、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。
なお、当事務所は相続登記についてもサポートをさせていただいております。
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【改正条文】
不動産登記法
(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
2 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
3 前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
(相続人である旨の申出等)
第七十六条の三 前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第一項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
3 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
4 第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
5 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
6 第一項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。