取締役・代表取締役就任時の印鑑証明書

株式会社において、新たに取締役が就任した場合、登記申請時に就任承諾書を法務局へ提出することとなります。(商業登記法第54条第1項)
そして、就任承諾書に押印する印鑑の種類や印鑑証明書の提出の要否については、取締役会を設置しているか、していないかによって結論が異なります。
なお、「商業登記電子証明書や公的個人認証サービス電子証明書等を用い電子署名をした電磁的記録」を提出する方法もありますが、今回のコラムでは添付情報を書面で提出する場合について解説致します。

取締役会非設置会社(取締役会を設置していない会社)

取締役の就任承諾書につき、個人の実印(新任取締役の市区町村に登録されている印鑑)を押印し、市区町村作成の印鑑証明書を添付する必要があります。(商業登記規則第61条4項後段)
なお、この印鑑証明書には作成期限の定めはありません。
当該取締役が再任(重任)の場合は実印の押印、印鑑証明書の添付が不要です。(商業登記規則第61条4項後段括弧書き)
また、新任の取締役が「取締役選任にかかる株主総会に出席して就任承諾の旨を述べた旨」が株主総会議事録に記載されていれば、別途就任承諾書を用意することなくこの議事録を就任承諾書とすることができます。ただし、当該議事録に新取締役も記名押印(個人の実印)をし、印鑑証明書を提出する必要があります。

取締役会設置会社

取締役の就任承諾書につき、印鑑は実印である必要はなく、印鑑証明書の添付も不要です。
しかし、代表取締役の就任承諾書については、個人の実印(新任代表取締役の市区町村に登録されている印鑑)を押印し、市区町村作成の印鑑証明書を添付する必要があります。(商業登記規則第61条第5項)
当該代表取締役が再任(重任)の場合は実印の押印、印鑑証明書の添付が不要です。(商業登記規則第61条第5項・商業登記規則第61条4項後段括弧書き)
この印鑑証明書についても作成期限の定めはありませんが、当該代表取締役につき別途会社実印を登録する(印鑑届出を行う)場合、作成後3ヶ月以内の印鑑証明書の提出が求められますので注意が必要です。(商業登記規則第9条5項)

代表取締役の選定についての印鑑証明書

代表取締役の選定方法は取締役会、株主総会、取締役の互選による方法等、会社の機関設計や定款の定めによって異なりますが、いずれの場合であっても代表取締役の選定に係る株主総会、取締役会等に出席(参加)した取締役・監査役が当該議事録等に個人の実印(出席取締役・監査役全員の市区町村に登録されている印鑑)を押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。(商業登記規則第61条6項)
ただし、変更前の代表取締役が新任代表取締役の選定決議に出席し、当該議事録等に会社実印(届出印)で押印している場合、上記印鑑証明書の添付を省略することができます。(商業登記規則第61条6項但し書き)
例えば、取締役がABC 代表取締役Aである取締役会設置会社が代表取締役をBに変更する場合、Aが取締役会に出席し議事録に会社実印(届出印)を押印すれば、ABCにつき、市区町村作成の印鑑証明書を添付する必要がなくなります。

以上を表にしてまとめると以下のとおりとなります。

取締役会非設置 取締役会設置
取締役の就任承諾書の印鑑

要実印 ※1

認印可 ※2

取締役の就任に係る印鑑証明書 ※1 不要
代表取締役の就任承諾書の印鑑 認印可 ※3 要実印 ※1
代表取締役の就任に係る印鑑証明書 不要  ※1
代表取締役選定に係る議事録等への押印 要実印 ※4 要実印 ※4
代表取締役選定に係る印鑑証明書 ※4

※4

※1 再任(重任)の場合は実印の押印、印鑑証明書の添付が不要
※2
 代表取締役の就任承諾も兼ねる場合、要実印
※3 取締役の就任承諾も兼ねる場合、要実印
※4 変更前の代表取締役が新任代表取締役の選定決議に出席し、議事録等に会社実印(届出印)で押印している場合、他の取締役は認印可
その場合、各出席取締役等の印鑑証明書の添付も不要

 

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